AI天皇論 第一回

「死せる孔明生ける仲達を走らす」

 

 

1700年以上前の三国志の時代のこんな言葉があるように人間は元来自分の目で見たものしか信用できず、そしてその視覚さえも騙されてしまうことが多々ある。蜀の行く末を案じながら、五丈原の荒野において魏とのにらみ合いのさなか、命を落としたとされる諸葛亮孔明。

もちろん史実では孔明は内政にはたけていたが、軍事についてはこの時代は指揮していないだとか、司馬懿は孔明の死期を悟って持久戦に持ち込んだので一枚上手であったとかいう評価もあるが、ここで言いたいのは、影響力の強い人物というのはいつからかその人よりもむしろその存在そのものに意味が付与されてしまう側面があるという点である。

 

 

 

別の例で考えてみよう。最近「人が変わった」かのように突如として宥和政策に舵を切り始めた北朝鮮には、近年一気に広がり始めた噂があるのをご存知だろうか?

それは「現在の金正恩は影武者」説である。しかしテレビなどの報道にも変わらず出ているし、少し丸くなったとはいえ、アジアの近隣諸国やアメリカに対して挑発的な態度は崩していないと感じるかもしれない。

 

しかし、今我々が見ている映像や画像が「真実」であると誰が言うことが出来るだろう?この前100周年を迎えたロシア革命の時代でさえもレーニンのそばからトロツキーを「消す」ことが出来たというのに。ましてや、いまやCG技術の発達で動画までもいくらでも編集可能なものとなってしまっている。

 

 

 

現在の金正恩が影武者であるという根拠は、昔より痩せたとか、耳たぶの形が変わっているなどまだまだ現段階では信用できるほど信憑性の高いものではない。

しかし、ここで問題なのは「今の金正恩が影武者であろうとなかろうとあまり問題ではない」という点である。世界は「本物の」金正恩が居なくても居るものとして回っていくし、そこに本物か否かは重要ではないと言うことだ。

 

 

 

では、逆に問わねばならない。本物が居なくなったとしてもなおその人を生きているように見せかける目的は何なのかを。そしてそれは意外と単純なものであろう。

 

秩序を守るためである。民衆の混乱を避けるためである。

 

古来から天皇が崩御したときには、混乱を避けるためその死は少数の限られた人によって秘匿され、葬儀や次代天皇の戴冠式の手筈が整ってから日を選んで世間に発表されていた。そういった意味では今回の今上天皇の譲位も似たような目的があると思われる。言い換えれば「天皇」というシステムをつつがなく進行させるために人の方が合わせているということである。

 

 

 

しかし、そもそもその人よりもむしろその存在そのものに意味が付与されてしまった場合、もはやその人自身に価値はあるのだろうか?大正から昭和初期にかけておこった大正デモクラシー期に、一つ大きな理論的基盤であった、美濃部達吉による天皇機関説は、天皇主権でありながらも天皇を一つのシステムとして運用することで天皇個人への主権性を制限した。換言すれば天皇をその役職、機関として定義することで、そのシステムに関わる人々すべて(参政権を持つ人々)に主権があるような擬似的な体制を作り上げるに至ったのである。

その意味で天皇個人に意味はなかった。だからこそ軽度の障害があったと言われる大正天皇でも天皇の座をつとめることが出来たのであるし、GHQによって天皇制を廃止されなかった一因でもあるという見方も出来るであろう。

 

 

 

さて、ここまでの議論から当初は能力・権力ある個人としてその人物が認められていたとしても時間とともにその存在そのものの存在感が大きくなってしますと言うことを確認した。

そこでついに今記事の本題に入ろう。それはつまり、

「天皇をAIとして作成すること」である。

突拍子もないことのように聞こえるかもしれないが、これまでの議論からある意味「天皇」というシステムを存続させることが重要になっていることを考えると不思議ではない。

現在皇室において男性の皇位継承者は皇太子である徳仁親王とその弟秋篠宮、さらに2006年に待望の皇族男子として生まれた悠仁親王の三名のみである。これまでもこうした皇室の男系皇位継承者が少ないことは常々議論されてきたが、そうした皇室の状況を考えると、そろそろこの議論が活発化してもおかしくはないように感じる。

 

 

 

次回からはAIの仕組みとAI天皇の技術的可能性についてや、それが持つ意味、さらにその先の状況まで考察していく。

 

 

AI天皇ができあがったとき、それこそが真の「象徴天皇制」の始まりであり、日本近代の始まりである。

 

そもそもAIって何?という人はこちらのサイトで学んでみては?


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中屋敷将大

中屋敷将大

早稲田大学文学部哲学科2年。浪人時、センター試験で860点を取り、センター利用で早稲田に入学。 1年次、株式会社ludus設立に参画し、現在は自身もプログラマーとして株式会社patersでインターンをしている。フリーペーパー、ウェブ、イベントの三媒体を用いて活動する総合メディアサークル、早稲田リンクス会計。早稲田大学声優文化研究会フリーペーパー発行責任者。
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