ラブホテルは永遠に完成しない 第2回

第2回

 

 あれ ビジネスリゾートホテルですから

 

 

 

江戸時代、吉原の誕生と共に当時としてのラブホテル「色茶屋」が生まれた。性とマーケティングが明確に結びついた瞬間である。以降、「連れ込み旅館」、「モーテル」、「ファッションホテル」と様相を変えて人々に“場所”を与えてきた。

セックスには“場所”が必要だ。あまり意識されないが、最後のゴールを前に幾度か阻んでくる問題がこれである。セックスだけでなくともキス、手をつないで二人きりで話すなど“クローズな空間”を常にふたりは求めるものだ。アメリカの80`sの若者が皆、車を欲しがったのはそういった背景が一つとしてある。『Back to the Future』で主人公のマーティも車を手に入れて子供のようにはしゃぎ、そのまま車の前で彼女とチューしていたのを思い出す。

そうした性愛空間の主導権はむろん男が握る。明治時代、連れ込み旅館とは上手く言ったもので男にはスマートに二人の空間にエスコートしなくてはならないというどこか義務に近い意識がある。

 

「どのホテルにしようか」と相手に問う。立ち止まって考え込んではいけない。

「金曜日だけど空いてるかな」と不安がる。2軒目がダメだといよいよ私たちは、まさしく“2アウト満塁のバッター”状態だ。

「割り勘しちゃダメだよな」  ―当たり前である

 

そうした多くの思案に見舞われながら男はようやく空間を手にする。

しかし、セックスは場所を問わない。親のいない実家、彼氏が一人暮らし、トイレだって屋外だってセックスは出来る。そう、ホテルは空間を提供するに過ぎない。数ある選択肢の一つにとどまる。

 

 

 

では一体どこに「ラブホテル」らしさが存在するのだろうか。その男女を楽しませよう、夜のひと時を思い出深くさせようという心意気である。

 

部屋に入って「お風呂おっきいよ!」とか「なにこの像!」とか子供のようにはしゃいだ記憶のある人も少なくないのではないだろうか。“ラブホテル界のウォルトディズニー”と呼ばれる亜美伊新はラブホテル設計の前には幼稚園などの施設の設計に関わっていた。彼は「セックスする時は大人も幼稚園児も変わらない」と言う。もっともアダルトなやり取りに対しあどけない遊び心を、選択肢をふたりに提供してくれるのだ。

 

 

先ほどのラブホテルに到達するまでの過程で、女性は男の誘導をじっと見ている。男性のある種のマスキュリニティ的な立場に対する女性の言動はつつましくも強かである。それこそ最近の女性は「連れ込まれる」側面が弱まり、ホテル選びにおいて女性の意見が強くなった。昔からの「ラブホテル」が衰退した大きな一因である。

 

 

吉田貴司『やれたかも委員会』1巻、双葉社、Case006

 

 

もちろん利用する側の考え方も変わった。120度ほど変わったと言っていい。

でもなにより変わったのは今のラブホの姿勢だろう。楽しませる気概は毛頭なく、空間を貸す施設に過ぎない。そうなるといよいよホテルとラブホの差はなくなり、日本からラブホが消えてしまう日が来るかもしれない。

(続く)

 

第1回目はこちらから↓↓↓

ラブホテルは永遠に完成しない 第1回

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斉藤 俊輔

斉藤 俊輔

早稲田大学文化構想学部3年生。ジェンダーやエロティシズムからメディア、応用倫理学について勉強中。関心の対象にヒーロー、TVバラエティ、ラジオ、漫画、アダルト(グッズ、AV)など。2015年に第8回田辺聖子文学館ジュニア文学賞エッセイの部-高校部門にて最優秀賞を受賞。 早稲田大学金曜日研究会 幹事長
斉藤 俊輔

斉藤 俊輔

早稲田大学文化構想学部3年生。ジェンダーやエロティシズムからメディア、応用倫理学について勉強中。関心の対象にヒーロー、TVバラエティ、ラジオ、漫画、アダルト(グッズ、AV)など。2015年に第8回田辺聖子文学館ジュニア文学賞エッセイの部-高校部門にて最優秀賞を受賞。 早稲田大学金曜日研究会 幹事長

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