『隣のギャルママは十代で鳶職の彼氏とデキ婚してからずっと子育てに追われていたのでああ見えて若い頃ほとんど遊ばずに過ごしてきたらしいのだが最近たまに旦那を見送った朝につまらなそうな溜息を吐いているのを隣室の僕は知っている 瑠菜』

タイトルがなっがい。本作は2013年の作品である。この時期、あらゆる作品物に長文タイトルが無闇に当てられたのは『俺妹』の功罪だろう。AV業界でも例外ではなかった。同作を30文字で要約するなら、

隣人のギャルママは案外うぶで、あっさり不倫が出来てしまった話”である。

 

この作品を選んだ理由はシンプルで「人生で最も世話になっているから」だ。しかし実に拍子抜けだが、数多あるAVの中でもこれが特筆して素晴らしい作品というわけじゃない。めちゃくちゃエロいとかでは、ない。

 

 

ここで語るのは「ギャルママ」の魅力についてだ。

 

今や、セルフプレジャーの際、嬉しくもうんざりするほど数のあるAVカテゴリー。DMM R18のカテゴリーはシチュエーション、タイプ、ジャンル、コスチューム、プレイ、その他に分かれて200以上存在する。この時疑いようのない事実として“性癖の記号化”が起きていることが言えよう。

アダルト業界ほど貪欲なメディアを私は知らない。「こんなの誰が観るんだよw」という発言の裏にはつまり「この世のAVであなたの性癖を満たせないことなどない」という事実が潜む。※“性欲を満たす”ではない

 

靄のかかった自分自身の未だ知り得ていない部分を記号に落とし込めることで自分を見つめるという行為において、セルフプレジャーは最も適した方法の一つである。

 

なぜなら、おちんちんはいつだって正直だから―

 

さて、上記のカテゴライズの中に「ギャルママ」は存在しない。しかし「ギャル」、「人妻」は存在する。察しが良い。—―「ギャルママ」というジャンルは複合ジャンルに該当する。

 

最も分解されたジャンルを仮に〈原子ジャンル〉と呼ぼう。原子ジャンルと複合ジャンルの区別は意識化されているものではない。しかし今この事実を知り、ワクワクしてこないだろうか?高2の私はこのことに気付いたとき、ちょうど初めて火を見つけた猿と同じくらい燥いだ。小躍りした。原子ジャンルを組み合わせればAVの可能性はまさしく無限大ではないか。あなたの性癖にもきっと届く作品がきっとあるのだ。

 

本題であるギャルママに戻る。これのエロティシズムはギャルとママの間のギャップに生まれる。ギャルにまとわりつく〈品のないイメージ〉とママが持つ〈母性・柔らかさ〉、相反する二間が生む差の大きさはダイレクトに性癖を刺激する。ただ、気をつけなくてはいけないが、何でもくっつければいいわけではない。

例えば、くノ一とその師である父との近親相姦。—―結構面白そう。

 

「ギャルママ」という生き物は実際に存在する。そのリアリティが接着剤となり、我々はすんなりと受け入れることが出来るのだ。同作はシリーズとなっており、他の女優の作品もあるが、個人的には他のものではいけない。なぜならこの瑠菜だけが唯一ちゃんと“知性”を持っているからだ。ギャルママというものは、げらげら笑いながら育児をしていればいいわけではないし、金髪のママがやっぱり料理は苦手、などの要素で完成するものではない。

あくまで“ギャル”が“ママ”であること。要は塩梅だ。作中で瑠菜が管理組合の書類を記入するシーンで「本籍……本籍…?」と悩むシーンがある。ここで我々は知らされるのだ。

 「あ、本籍わかんないんだ!」と。家庭が複雑で本籍がわからないのか、はたまた本籍という言葉の意味自体わからないのかは知る由もない。しかしお茶を淹れる、子供を寝かしつける、網タイツを脱ぐその育児でくたびれた黒肌の若妻の言動は、全てギャルママという枠を欠くことも飛び越えることもない洗練されたギャルママなのである。

 

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斉藤 俊輔

斉藤 俊輔

早稲田大学文化構想学部3年生。ジェンダーやエロティシズムからメディア、応用倫理学について勉強中。関心の対象にヒーロー、TVバラエティ、ラジオ、漫画、アダルト(グッズ、AV)など。2015年に第8回田辺聖子文学館ジュニア文学賞エッセイの部-高校部門にて最優秀賞を受賞。 早稲田大学金曜日研究会 幹事長
斉藤 俊輔

斉藤 俊輔

早稲田大学文化構想学部3年生。ジェンダーやエロティシズムからメディア、応用倫理学について勉強中。関心の対象にヒーロー、TVバラエティ、ラジオ、漫画、アダルト(グッズ、AV)など。2015年に第8回田辺聖子文学館ジュニア文学賞エッセイの部-高校部門にて最優秀賞を受賞。 早稲田大学金曜日研究会 幹事長

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