『45 Stones』斉藤和義(2011)

〜震災後の日常を記述した11曲〜

 

2011年東日本大震災の発生以後、数々のアーティストが震災に対してのアクションを起こした。

しかし、その表現のすべてが「ひとつなろう」、「がんばろう」という単一的なメッセージになってしまったことは震災後の空気を味わった人たちならば誰もが知っていることだろう。

 

 

その中で斉藤和義だけは違った。

大ヒット曲「ずっと好きだった」のメロディで福島第一原発の事故への怒りと批判を歌った「ずっとウソだった」をYouTube上でゲリラ的に発表。

人々が感じている不満や憂鬱をポップなメロディに載せて彼は歌った。

 

 

もちろん「ひとつになろう」、「がんばろう」というメッセージによって勇気づけられた人も多くいることだろう。実際音楽は癒しの力を持つ。

しかし、癒しだけが音楽ではない—ロックの、もっと言えば音楽が持つ批評性を「ずっとウソだった」で斉藤和義は震災後の日本に復活させた。

そして、震災後の半年間、日記を書くように楽曲を作り続け『45 Stones』という1枚の作品にまとめた。

ここに書きつけられている言葉は、震災後の日常の風景や内面を切り取った言葉の数々。ほとんどの楽曲にストレートで生々しい怒りや、どうすることもできない絶望が垣間見える。

 

移り変わりの激しいこの世の中/目指しているゴールは誰も知らないまま/息を切らしてボクが辿り着く頃/紙テープはもう切れてる

(ウサギとカメ)

 

 

オオカミが来るぞ!/オオカミが来るぞ!「電気が足りません」/「平和利用です」/「安全です」/「安全です」

(オオカミ中年)

 

テレビもニュースも誰かに気を使ってばかり/そいつを鵜呑みにしてる思考停止の悦楽主義者/み分不相応の夢を捨てるつもりもなく/ただひたすら「がんばろう!

(雨宿り)

 

未曾有の災害のあとの日常が、このアルバムには刻印されている。

そして、そこで生まれたメロディと言葉は2020年代に受け継がれていかなければならない。そんな使命感に駆られる一枚だ。

The following two tabs change content below.
吉田 ボブ
サザンオールスターズを子守唄にして育ち、マイケル・ジャクソンによって音楽に目覚める。 音楽、野球、映画、アイドルを横断歴に論じる。TAP the POPにて隔週で連載 年2回発行されるフリーペーパー「WASEDA LINKS」編集長
吉田 ボブ

吉田 ボブ

サザンオールスターズを子守唄にして育ち、マイケル・ジャクソンによって音楽に目覚める。 音楽、野球、映画、アイドルを横断歴に論じる。TAP the POPにて隔週で連載 年2回発行されるフリーペーパー「WASEDA LINKS」編集長

あわせて読みたい

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA